「君、一緒に統計検定受けないかい?」
研究室で先輩にそう声をかけられました。
勉強が嫌いな私は一瞬、顔をしかめました。
(うわー、統計学って大学1年で勉強したけど、むずいんだよな。勉強するの嫌だな)
でも、冷静に考えると、統計学は研究する上でめっちゃ大事。そう、めっちゃ大事なんです。
でも、勉強が嫌で今まで逃げてきた。でも統計学は大事。
一緒に勉強しようと誘ってくれたのは、チャンスなのでは?
私は考えを改め、先輩の提案に乗りました。
研究における統計学
研究する上で必要なのは?と聞かれたら、私は
研究分野の専門知識、実験技術、そして統計学的な知識
と答えると思います。
中でも統計学的な知識は、研究の肝になる存在です。これが無いと、今までの実験が全て無駄になりかねません。
一方で、最も疎かにされがちなのも統計学です。私も勉強するのが面倒で、今まで目を背けてきました笑。
そんな「大事だけど面倒」な性質を持つ統計学について、書いていきます。
統計学の勉強って面倒。だって勉強しなくても実験できるし。
(私の研究分野だけかもしれませんが)研究といえば、「とある条件間で測定値に差が生じるか」という実験が多いイメージです。
例えば、「とある薬を投与した時と投与しない時で、マウスの生存日数に差はあるか?」といった感じですね。
この「差があるか?」という評価はかなり奥が深く、統計学的知識が重要になります。
しかし、統計の勉強はめんどくさい!!!
めんどくさいと感じているのはベテランの研究者にも多いようで、論文でも統計的な評価がテキトーなものが多いです(って教授が言ってました笑)。
統計学を疎かにしていても何となく実験データが得られてしまうので、必要性を感じにくいのが残念なところです。
さっきの薬の実験の場合、統計学を一切勉強していない人は
マウスを2匹用意して、1匹は薬あり、もう1匹は薬なしで育てて何日間生きるか比べる
という実験をするかもしれません。
統計学を勉強しなくても、何かしらの実験はできます。しかし、統計学的に見ると、この実験には不備があります。
統計学の知識を踏まえた実験じゃないと、何も評価できない
実験結果として、薬ありが15日、薬なしが10日生存だったとします。
この時、「薬のおかげで生存日数が伸びた!」と言っていいか?という問題があります。
確かに薬により5日間長生きしたと言えるかもしれませんが、これでは統計学を勉強した人に「これじゃ絶対アカン」と怒られます。
なぜなら、測定データにはバラツキが生じるものだという視点が欠いており、「薬は関係なく、たまたまそういう結果になっただけ」という可能性が考慮されていないからですね。
薬を投与されたマウスがたまたま丈夫な個体で、たとえ薬が無くても長生きしたかもしれません。このようにマウスの個体差が考慮されていません。
あるいは、飼育環境として、薬なしのマウスがいたケージのみが寒く、免疫力が低下して生存日数が低くなったかもしれません。もしかしたら、得られたデータは「実は薬に効果は全くなく、あくまで飼育時の温度差が反映された結果」かもしれません。このように、生育環境の誤差が考慮されていません。
可能性について挙げると他にもまだまだあってキリがありませんが、こういった可能性について考慮されていない実験なので、薬の効果について結局何も分からないということになります。
しかし、統計学的な知識を身につけていれば、上記のような課題を解決できます。
実験データには自ら設定した条件差(今回は薬の有無)以外にも様々な要因の影響が反映されます。不要な影響を省き、自分が知りたいこと(今回は薬によって生存日数が変化するか)が分かるように実験してデータを得るには統計学の力が必要です。
だから、統計学を勉強しよう
統計学的な視点を欠いた実験は全て無駄になります。せっかく時間をかけた実験も全て水の泡。
統計学の知識が無ければ、いつまで経っても良い実験ができません。
だから、実験を進める前に、まずは統計の勉強をした方が、今後の実験の労力を圧倒的に抑えられます。
なので、先輩から「統計学を勉強しないか」と誘われた時はチャンスだと思いました。
先輩も、
「統計学は大事で勉強しようと思っていたけど、なかなか勉強を始められないから誰かと頑張ろうと思って誘った」
とのことでした。
統計学の勉強が面倒なのはみんな同じ。そして仲間がいれば頑張れるのが人間ってやつですよね。
また、「統計検定に合格する」というゴールがあることで、勉強へのモチベーションが高まります。
先輩に誘われたこの機会を逃せば、私は一生統計学を勉強しない気がしました。
なので、私もここで統計学の勉強をする決意を固め、「もう統計学から逃げません」と神に誓ったのでした(大げさ)。
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