私は生物の遺伝子関連の研究をしていますが、研究室で実験をしていると、こんなことを思います。
実験って料理みたいだよな
この気持ちは私だけが感じているものではなく、他の人も感じているようです。
うちの教授も「実験は料理だ!」と言うことがあります。また、私の知り合いに料理が好きなおばさんがいるのですが、「料理はサイエンスだ!」と言っています。
やっぱり実験と料理には似ているところがあるようです。
そこで今回は、実験と料理がどれくらい似ているのかを、私が実験をしているときの視点から書いてみたいと思います。
実験と料理の類似点
実験器具には料理に使えそうなものがある
実験室には色々とゴツい実験器具がありますが、原理的にはキッチンにある調理道具と何ら変わらないものがあります。
乾熱滅菌器
主にガラス器具を200度近くの高温で熱して滅菌する時に使います。
要するにオーブンです。
その気になればクッキーやパンを焼けそうです。ただ、覗き窓が無く、作動中は戸を開けられないので焼き加減はカンで判断することになります。
オートクレーブ
耐熱性の低いプラスチック製品は、乾熱滅菌では溶けてしまうのでオートクレーブという処理で滅菌します。あとは培養して使い終わった細胞、大腸菌なども放っておくと増殖するリスクがあるのでオートクレーブします。
オートクレーブというのは、水蒸気で高温高圧にして滅菌を行うものです。
これは要するに圧力鍋ですね。
家庭用の圧力鍋よりも高圧力になるので、煮物なんかはすぐに味が染みそうです。
教授が学生の頃、知り合いがオートクレーブで芋を蒸して食べていたという話も聞いたことあります。(衛生的にも問題があるので、皆さんは真似しないようにしてください)
逆に、キッチンにもあるものが実験室にもある
実験室には料理に使えそうな器具があるほか、逆にキッチンで使われているものを実験に使っていたりします。
ラップ・アルミホイル
実験ではラップとアルミホイルをよく使います。これらは普通のスーパーでも見かけるものです。
実験室での用途もキッチンと似ています。
ラップの用途は液体の蒸発防止で使います。アルミホイルはラップよりも丈夫な使い捨てのフタとして使ったり、容器を覆って遮光するために使ったりします。
電子レンジ
電子レンジも使います。大腸菌を育てるときの寒天培地を溶かすときに使います。
ちなみに、この電子レンジでお弁当を温めている人は見たことありません。幸いなことに給湯室にも電子レンジがあるので。
料理に使えそうな試薬たち
試薬には毒物、劇物がたくさんありますが、中には一般家庭にもありそうな、皆さんにとっても馴染み深いものがあります。
砂糖、しお、お酢、お酒
グルコース(砂糖)、塩化ナトリウム(しお)、酢酸(お酢)、エタノール(お酒)・・・
キッチンにあるものと比べると精製度が恐ろしく高いので、残念ながら料理に複雑で豊かな風味をつけることはできません。
寒天もある
細胞や大腸菌を育てるときの固形培地は寒天で固めています。
実験中に小腹が空いたらグルコースと寒天でゼリーでも作って食べましょう。味、安全面は保証できませんが。
料理も実験も手順書に従って進める
料理→レシピ / 実験→プロトコル
料理においては「レシピ」という手順書に従うことで「いつもの味」を実現できます。
実験では「いつもの条件」を実現することが大切です。条件がブレてしまうと正確な実験結果が得られないので。
なので実験では「プロトコル」という手順書に従って作業します。
洗い物が面倒
料理をしたことある人なら共感できると思います。
料理が終わったあと、シンクに洗い物が溜まっているとゲンナリしません?私はします。
実験でもフラスコや試験管といった洗い物が発生します。
そして、ルールに従ってすごく丁寧に洗う必要があります。
例えば、「すすぎは洗剤の泡が落ちてから10回」とかですね。洗剤が残っていると、次の実験で使う時に悪影響が出るので面倒でも徹底します。
キッチンで食器を洗う場合はこんなにすすがなくても大丈夫なので安心してください。とはいっても、私はクセで家でも10回すすいでしまうことがあります笑。
まとめ
こうやってまとめてみると、予想以上に似たところが多くて自分でも驚きました。
もちろん研究分野によって実験室にあるものが変わるため、私の実験室が特に料理と近い環境だったのかもしれません。
研究や実験というと日常とは別世界だと感じる方も多いと思いますが、今回のお話で少しでも親近感を持って貰えたら嬉しいです。
料理が得意な方は、割と実験も楽しめるのではないでしょうか?あるいは、普段から実験をやっている方は料理を趣味にしてみるのも良いかもしれませんね。
今回は以上です。ありがとうございました。
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