大学生の過ごし方と言えば、バイトにサークル、就活、旅行なんかが主なイメージです。
一方で「大学生活と言えば研究だ!」という人は少なく、研究室(文系ならゼミ)配属後も適当に研究してさっさと卒論書いて終わりという人が大抵だと思います。
しかし、将来は研究関連に就職しない人にとっても、研究を通して得られるものは大きく、疎かにするのはもったいないと私は考えます。
私はいま大学院生ですが、大学院に進学したのは、研究に取り組むことに様々なメリットを感じ、研究を続けたいと思ったからです。
今回は、大学生(あるいは院生)が大学で研究に打ち込むことで得られるメリットについて、書いていきます。
研究に打ち込むメリット
研究室の環境によっても変わると思いますが、少なくとも私は今の研究室での研究を通して、以下のメリットがあると感じています。
論理的思考力が高まる
研究では、受験の問題を解くのと違って模範解答が無い答えを探す必要があります。模範解答が無い中、どうやって「答え」を導くかですが、誰が見ても論理的に納得できるかどうかを指標にします。
(ここでは「答え」と書いていますが、問題集の解答のように絶対的なものではありません。今まで「答え」だとされていたことも、後に論理的な不備が見つかった時点で「答え」ではなくなります。あくまで「現時点においては最も確からしいこと」を「答え」と表現しています。)
研究室のメンバーとのディスカッションを通して様々な視点から研究内容の論理性を高めたり、質の良い(論理的に納得度の高い)論文を読んだり、、、
そういった過程で自分の論理的思考力が高まっていきます。
研究を通して培った論理的思考力は、研究分野以外にも役立ちます。
例えば、普段の生活においても、物事の判断が正確になります。
誤った情報に振り回されることが減るため、買い物でセールスに踊らされ余計なものを買ってしまったりといった損を減らすことができます。
また、仕事をする時にも論理的思考力は役立ちます。仕事では様々な課題があり、それを解決していく必要があります。
会社であれば、例えば「製品製造の効率を上げたい」などといった課題があったとします。
この課題を解決するために、工場を視察して現状を把握したり、不良品検出率のデータを見たりして情報収集します。そういった客観的データから、「こうすれば製造効率が上がるだろう」という仮説を立てます。この仮説は、誰もが「これなら確かに製造効率が上がった」と論理的に納得できるようなものであるほど課題解決につながるものとなります。
そして、それを実現するための具体策を考え、それを実際に実行することで検証します。
このプロセスは、研究室で研究している時とほぼ同じだと思います。扱う対象が学術的なことなのか、企業的なことなのか、それだけの違いだと思います。
参考までに、課題解決の流れの例を研究室と会社で並べた表を示します。
研究室 | 会社 | |
課題点 | なぜこのような現象が起こるのかが未解明 | 製造効率を上げたい |
情報収集する | 論文を読む、過去の実験データを見返すなど | 工場の視察、不良品検出率データの確認など |
仮説を立てる | この現象が起こるのは〇〇のような仕組みが存在するからではないか | 製造工程Aの方法を新たなA’に変更することで生産効率が上がるのではないか |
検証する | 仮説が正しい場合に現れる現象を検出できるような実験をする | 実際にA‘を導入し、生産効率を算出して従来と比較する |
結果が出る | 仮説が立証された/されなかった | 製造効率が上がった/上がらなかった |
このように研究室と会社では課題解決のプロセスが類似しています。研究を通して得られた経験は、会社での仕事にも活かしやすいと思います。
プレゼン力が高まる
研究室では定期的にゼミが開かれ、自分の研究の進捗報告や、読んだ論文の内容紹介を行います。その時、パワーポイントで作成したスライドを使い、プレゼンをします。
先輩の発表を見たり、先輩から教えてもらったり、そういった経験を通して見やすいスライドの作り方や、分かりやすい説明の仕方を学ぶことができます。
そして、プレゼン力は研究室だけでなく、企業に就職してからも重要なスキルになります。そして、研究に力を入れた人(あるいは、大学院に進学した人)は、このプレゼン力が高い傾向にあると思います。
私は学部生時代に、ある企業のインターンシップに参加しました。数人の参加者でグループを作り、そのグループでお題に沿った企画を考えて人事部の方にプレゼンするという内容でした。
当時の私は発表する経験がほとんど無く、プレゼンの大切さをよく分かっていませんでした。スライドのデザインは「パワポに入ってるオシャレなテンプレートを使えば、良い感じになるでしょ」という感覚でした。また、「グループで考えた企画が具体的にどういう内容なのかさえ説明していれば、聞き手は十分理解してくれる」と思っていました。
しかし、大学院生がいるグループのプレゼンを見た時、その考えは間違っていることに気づきました。
スライドには無駄な装飾が無く、何の情報を伝えたいのかが明確でした。そして、発表内容は企画の具体的内容だけでありませんでした。いきなり具体的な企画内容を言われても、その必要性が相手に伝わっていなければ真剣に聞いてくれません。なので、大学院生のグループでは、企画を思いつくに至った背景を最初に説明し、企画の価値を聞き手に理解してもらう構成にしていました。
全体を通して、「相手に内容をしっかりと伝えるための工夫」が様々なところに感じられました。
大学院に進学した今思い返すと、(研究に取り組んできた)大学院生は普段の研究生活を通してプレゼン力が鍛えられていたから、インターンシップでも分かりやすい発表ができたのだと思います。
世界の誰も知らないことに立ち向かう高揚感 が得られる
研究室に配属されると研究テーマが与えられます。
でも、大抵はその内容が難しすぎて取り組むのが面倒だと思うかもしれません。
しかし、それはある意味当然のことです。だって、これから研究し、解明するのは世界の誰もがまだ知らないことだから。
どれだけ論文を探しても書いていないことを、自分の力で明らかにしようとするのが研究です(もちろん多くの方の助けがあってこそですが、研究テーマを主体的に進めるのは学生本人です)。
世界の誰もが知らないことに立ち向かうという経験は、そう簡単には出来ないと思います。
そう考えると、なんだかワクワクしませんか?
その高揚感を味わうだけでも、研究というものと向き合う価値は十分にあるのではないでしょうか。
まとめ
以上、研究に打ち込むメリットについてまとめました。
もちろん、学生時代の有意義な過ごし方として、研究が必須というわけではありません。
研究ではなく自分で起業したり、サークルやバイトでチームをまとめたりする経験も大きな学びがあります。
私が言いたいのは、「大学での研究って疎かにされがちだけど、結構メリットもあるよ」ということです。
研究に興味が無かった方にも「ふーん、研究してみるのも悪く無いじゃん」と思ってもらえれば幸いです。
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